1. はじめに
マーケティング戦略を考える際、すべての消費者をターゲットにするのは非効率です。市場にはさまざまなニーズを持った人がいるため、適切な顧客層を選び、そのニーズに合った商品・サービスを提供することが重要になります。
このとき役立つのが 「STP戦略」 です。
STP戦略とは?
市場を細かく分類し、自社が狙うべきターゲットを決め、他社と差別化するための戦略のこと。
STPは、次の3つのステップで構成されます。
- S(Segmentation:市場の細分化)
- T(Targeting:狙うべき市場の選定)
- P(Positioning:市場での立ち位置の決定)
この記事では、STP戦略の基本と具体的な活用方法 について詳しく解説します。
2. S:セグメンテーション(市場の細分化)
セグメンテーションとは?
市場全体を一つのまとまりとして見るのではなく、共通の特徴を持つグループ(セグメント) に分けることを指します。
セグメントを分ける基準には、以下のようなものがあります。
分類基準 | 具体例 |
---|---|
地理的変数(Geographic) | 都市部・地方、国内・海外、気候の違い |
人口統計的変数(Demographic) | 年齢、性別、職業、所得、家族構成 |
心理的変数(Psychographic) | ライフスタイル、価値観、趣味 |
行動変数(Behavioral) | 購買頻度、ブランドロイヤルティ、購買動機 |
活用例:スポーツウェア市場
スポーツウェアの市場を細分化すると、次のようなセグメントが考えられます。
- アスリート向け(競技志向) → 機能性を重視する層
- 健康志向の一般層 → フィットネスやジョギングを楽しむ人
- カジュアルファッション層 → スポーツウェアを日常着として着る人
このように、セグメントを明確にすることで、どの市場に狙いを定めるかが見えてきます。
3. T:ターゲティング(狙うべき市場の選定)
ターゲティングとは?
セグメント化した市場の中から、自社が狙うべきターゲットを選ぶ プロセスです。
ターゲティングの手法には、主に以下の3つがあります。
ターゲティング手法 | 特徴 |
---|---|
無差別型マーケティング | すべての市場に同じ商品を提供(例:コカ・コーラ) |
差別型マーケティング | 複数の市場に異なる商品を提供(例:トヨタの車種展開) |
集中型マーケティング | 特定の市場に絞って商品を提供(例:高級時計ブランド) |
活用例:コーヒー市場
コーヒー市場をターゲティングすると、次のような選択肢があります。
- 価格重視の層向け → コンビニコーヒーやインスタントコーヒー
- 品質重視の層向け → 高級スペシャルティコーヒー
- 利便性重視の層向け → カプセル式のコーヒーマシン
例えば、高級路線を狙う場合、「品質を求める層」をターゲットにし、「香りとコクにこだわったプレミアムコーヒー」 という商品コンセプトを打ち出すことになります。
4. P:ポジショニング(市場での立ち位置の決定)
ポジショニングとは?
競争の中で、自社の商品・サービスの独自の価値を明確にする ことです。
ポジショニングの基本は、「競合とどう差別化するか?」を考えること。
以下のような要素を軸に、「自社ならではの強み」 を明確にします。
ポジショニングの軸 | 具体例 |
---|---|
価格 | 高価格(高級ブランド) vs. 低価格(コスパ重視) |
品質・性能 | 高機能 vs. ベーシック |
ターゲット層 | 若者向け vs. シニア向け |
ブランドイメージ | クール・おしゃれ vs. 伝統的・安心感 |
ポジショニングマップの活用
ポジショニングを視覚化するために使われるのが 「ポジショニングマップ」 です。
例えば、スマートフォン市場を 「価格(高い・安い)」×「性能(高い・低い)」 の2軸でマッピングすると…
高価格 | 低価格 | |
---|---|---|
高性能 | iPhone / Galaxy | Xiaomi |
低性能 | 高級フィーチャーフォン | 廉価版スマホ |
このようにポジショニングを整理することで、「競争が激しくないポジションを狙う」「競合との差別化ポイントを明確にする」といった戦略を立てやすくなります。
5. STP戦略の成功事例
スターバックスのSTP戦略
STPのステップ | スターバックスの戦略 |
---|---|
S(市場細分化) | カフェ市場を「日常的なコーヒー」 vs. 「プレミアムなカフェ体験」に分ける |
T(ターゲティング) | 高品質なコーヒーとくつろげる空間を求める層をターゲットに |
P(ポジショニング) | 「高級カフェ」として、価格ではなく体験価値で差別化 |
スターバックスは、安価なコーヒーを提供するコンビニやファストフードと競争するのではなく、「リラックスできるカフェ体験」 を提供することで独自のポジションを築きました。
6. まとめ
STP戦略は、マーケティングの基本となるフレームワークであり、適切に活用することで競争優位性を築くことができます。
- S(セグメンテーション) → 市場を細分化し、異なるニーズを見極める
- T(ターゲティング) → 自社が狙うべき市場を決める
- P(ポジショニング) → 競争の中での自社の立ち位置を決める
マーケティング戦略を考える際は、「どの市場を狙い、どんな価値を提供するのか?」を明確にすることが成功のカギとなります。